督脈(GV)完全ガイド|循行・全28穴・臨床応用・国試対策

目次

はじめに

督脈(Governing Vessel, GV)は奇経八脈の一つで、「陽脈の海」として全陽経を統括します。脊柱正中を走行し、脳・脊髄・腎(命門の火)と密接に関わります。鍼灸国家試験では百会(GV20)・大椎(GV14)・命門(GV4)・水溝(GV26)が特に頻出で、臨床では神経系疾患・発熱・精神疾患・腰脊部疾患に広く用いられます。

基本情報

項目 内容
経脈名 督脈
英名 Governing Vessel
略称 GV
分類 奇経八脈
特徴 陽脈の海・脊柱正中走行
経穴数 28穴
起始穴 長強(GV1)
終止穴 齦交(GV28)

循行ルート(WHO/ISO 2008標準)

督脈は骨盤内(小腹内)に起こり、腎間動気(命門)から会陰部に出て尾骨尖(長強GV1)を経て脊柱正中を上行します。腰部(命門GV4)・脊中(GV8)・霊台(GV10)・大椎(GV14)を経て後頭部(風府GV16)に入り脳を絡います。頭頂(百会GV20)を経て前頭部・鼻柱・口唇上(水溝GV26)を経て上歯龈(齦交GV28)で終わります。

主要経穴一覧

番号 穴名 読み 部位概要 主治・分類
GV1 長強 ちょうきょう 尾骨尖と肛門の中点 痔疾患・脱肛・遺尿(絡穴)
GV2 腰兪 ようゆ 仙骨裂孔 腰痛・月経不順
GV3 腰陽関 ようようかん 第4腰椎棘突起下陥中 腰痛・坐骨神経痛・遺精
GV4 命門 めいもん 第2腰椎棘突起下陥中 腰痛・命門の火衰・生殖器疾患
GV6 脊中 せきちゅう 第11胸椎棘突起下陥中 消化器疾患・癲癇
GV9 至陽 しよう 第7胸椎棘突起下陥中 黄疸・胸背痛
GV10 霊台 れいだい 第6胸椎棘突起下陥中 咳嗽・疔瘡
GV12 身柱 しんちゅう 第3胸椎棘突起下陥中 咳嗽・小児疳積・精神疾患
GV13 陶道 とうどう 第1胸椎棘突起下陥中 発熱・マラリア・頭痛
GV14 大椎 だいつい 第7頸椎棘突起下陥中 発熱・頸肩痛・免疫強化(諸陽の会)
GV15 瘂門 あもん 後髪際上方0.5寸、正中線上 失声・精神疾患(禁灸)
GV16 風府 ふうふ 後髪際上方1寸、正中線上 頭痛・眩暈・外感(禁灸)
GV17 脳戸 のうこ 枕骨隆起上縁上方1.5寸 頭痛・眩暈(禁灸)
GV19 後頂 ごちょう 百会後方1.5寸 頭痛・眩暈
GV20 百会 ひゃくえ 後髪際上方7寸、正中線上(耳尖連絡上) 頭痛・不眠・高血圧・脱肛(諸陽の会・頂の要穴)
GV23 上星 じょうせい 前髪際上方1寸 鼻疾患・頭痛・目疾患
GV24 神庭 しんてい 前髪際上方0.5寸 精神疾患・頭痛(禁灸の文献あり)
GV25 素髎 そりょう 鼻尖正中 鼻疾患・昏迷・鼻出血
GV26 水溝 すいこう 人中溝上1/3と下2/3の境 昏迷・痙攣・顔面神経麻痺(救急要穴)
GV28 齦交 ぎんこう 上唇内側、上歯龈正中 歯龈腫痛・鼻疾患

臨床での主な使いどころ

百会(GV20)は「諸陽の会」として頭痛・不眠・高血圧・脱肛・子宮下垂の昇提穴として必用。大椎(GV14)は全陽経の交会穴として発熱・頸肩痛・免疫調整に。命門(GV4)は命門の火を補う灸穴として腎陽虚(冷え・遺精・不妊)に重用されます。水溝(GV26)は昏迷・痙攣・急性腰痛の救急穴として不可欠。風府(GV16)・瘂門(GV15)は禁灸穴として安全上の注意が必要です。

臨床エビデンス

【百会と不眠】Yeung et al.(2009, J Altern Complement Med)のRCTでは百会・神門を含む鍼治療が原発性不眠症の睡眠品質(PSQI)を対照群と比較して有意に改善しました。【大椎の解熱効果】Shu et al.(2012, Evid Based Complement Alternat Med)のメタアナリシスでは大椎への刺絡・鍼治療が小児発熱の体温低下に有意な効果を示しました。【脳卒中後遺症への督脈選穴】多数のRCTを対象としたメタアナリシス(Liu et al., 2017, J Stroke Cerebrovasc Dis)では、大椎・百会・命門を含む督脈系の選穴による鍼治療が脳卒中後の運動機能回復を有意に促進することが示されました。

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著者:ハリメド編集部|現役医師監修

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この記事を書いた人

「医師×鍼灸師プラットフォーム HARI×MED」管理者。クリニックと併設鍼灸院を経営。医学的知見と経営・マーケティングを融合させ、鍼灸のファンを増やす活動を通じて受療率向上を目指しています。持続可能な医療連携モデルの構築を全国で支援します。

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