周栄(SP20)の場所・効果・押し方|胸痛・咳嗽・脇肋脹痛・食欲不振に用いるツボを鍼灸師が解説

周栄(SP20)のツボの位置|前胸部外側 - 3Dツボマップ

周栄(SP20)は、足太陰脾経に属する重要なツボで、胸部の症状改善に用いられる重要な穴位です。東洋医学では「宣肺理気」「化痰止咳」の効能があるとされており、現代のストレス社会における胸痛や咳嗽症状に対する治療において、鍼灸師から注目を集めています。本記事では、周栄の正確な位置から効果、自宅でのセルフケア方法まで、詳しく解説します。

目次

周栄(SP20)とは

周栄(しゅうえい)は、足太鉰脾経に属する穴位で、脾経の11個のツボの中でも胸部に位置する重要なツボです。脾経は「後天の気」を司る経絡とされており、消化器系の機能と関連が深いとされています。

東洋医学の古典である『内経』や『鍼灸甲乙経』によれば、周栄は肺の気機を宣通し、胸部の気の流通を改善する作用があるとされています。特に、胸痛、咳嗽、脫肋脷痛などの症状に対して、積極的に用いられてきました。

現代の鍼灸自床においても、周栄は呼吸器系の症状や胸部症状、ストレス関連の胸痛に対する有効なツボとして認識されています。特に、心身相関の観点から、精神的ストレスによる胸部の違和感に対する治療穴として選択されることが増えています。

周栄の場所

周栄の正確な位置を理解することは、セルフケアの効果を高めるために重要です。以下、詳細な取穴法を説明します。

解剖学的位置

周栄は第2肋間、前正中線の外方6寸に位置しています。これは以下のように理解できます:

  • 上下方向:鎖骨の下方、肋骨の第2肋間に位置しています。乳頭よりも上方、やや頭側に位置しています
  • 左右方向:前正中線(胸骨の中央)から外側に約9cm(6寸)離れた位置です。体の中心線から数えて、周栄は脇腹寄りに位置しています
  • 層構造:皮膚の深さ約0.5~0.8寸(約1.5~2.4cm)の深さで、大胸筋と肋間筋層の間に位置しています

SP19(胸郷)との位置関係

周栄(SP20)は、同じ脾経に属するSP19(胸郷)の一つ上、つまり第3肋間ではなく第2肋間に位置しています。この位置関係は取穴時に重要な参考になります。

項目詳細
ツボの名前周栄(しゅうえい)
所属経絡足太鉰脾経(あしたいいんひけい)
取穴部位第2肋間、前正中線の外方6寸
主な効果胸痛、咳嗽、脫肋脷痛、食欲不振
刺鍼の深さ斜刺または平刺0.5~0.8寸(深刺厳禁)
お灸の適否適(温和灸または台座灸を推奨)

取穴のランドマーク

実際に周栄を見つけるためのランドマークは以下の通りです:

  • 患者を仰臥位または半坐位にして、自然に腕を下ろします
  • 乳頭を結ぶ水平線を基準とします
  • その上方、約2肋間上の第2肋間に周栄が位置します
  • 前正中線(胸骨の中央線)から外側に約9cm(6寸)の距離を測ります
  • 指で軽く触診すると、肋骨と肋骨の間に位置していることが確認できます
周栄(SP20)のツボの位置を3Dイラスト

周栄の効果・適応症状

東洋医学的効能

周栄は東洋医学において、以下の機能を持つとされています:

宣肺理気(せんはいりき):この言葉は「肺を宣通し、気の流れを整える」という意味です。肺の気が流通不暢になると、胸痛や咳嗽が生じるとされていますが、周栄はこの状態を改善します。特に、気の停滞による胸部症状に対して有効とされています。

化痰止咳(かたんしがい):この言葉は「痰を化して、咳を止める」という意味です。脾経は「水湿の処理」に関わる経絡ですが、その機能が低下すると、痰が生成され咳が出現します。周栄はこの痰を化し、咳を止める作用があります。

適応症状の詳細

周栄が用いられる主な症状は以下の通りです:

  • 胸痛:胸部の痛みや違和感。特にストレス関連の胸痛に有効です
  • 咳嗽(がいそう):空咳や違和感による咳。特に、胸部の気の停滞による咳に対して用いられます
  • 脇肋脹痛:脇から肋部にかけての脹る痛み。気の流通不暢による症状に有効です
  • 食欲不振:脾経の機能低下に伴う食欲不振に対して用いられます
  • 胸悶:胸が悶々とした不快感。ストレス関連の症状に対して用いられます
  • 呼吸困難:浅い呼吸や息苦しさ。特にストレス関連の症状に対して有効です
  • 心悸亢進:心臓がドキドキする感覤。脾経と心の関係から適応とされています
  • 胸部の圧迫感:呼吸をしても楽にならない、何かに押さえられているような感覚

現代医学的知見

現代医学の観点から、周栄への鍼灸刺激は以下のようなメカニズムで効果を発揮すると考えられています:

神経生理学的メカニズム:周栄の周囲には、第2肋間神経が走行しています。この神経領域への刺激は、脊髄レベルでの疼痛緩和を引き起こします(ゲートコントロール説)。また、鍼灸刺激は脳脊髄液内のエンドルフィンやセロトニンなどの神経伝達物質の分泌を増加させ、鎮痛効果をもたらします。

循環系への影響:周栄への刺激は、局所の血液循環を改善し、筋肉の緊張を緩和します。特に、大胸筋や肋間筋の過緊張による胸部の違和感に対して、物理的な緊張緩和をもたらします。

自律神経系への調整:周栄への鍼灸刺激は、交感神経と副交感神経のバランスを整え、ストレス関連の胸部症状の改善に寄与します。特に、過度に興奭した交感神経を鎮静化させる作用がぁります。

呼吸機能への影響:肋間筋の緊張が緩和されることで、呼吸の深さが改善され、酸素交換効率が向上します。これにより、呼吸困難や息苦しさが改善されます。

周栄の押し方・セルフケア方法

周栄は自宅でのセルフケアが可能なツボです。以下の方法を参考に、正しい刺激方法を実践してください。

指圧による押し方

椅子に座るか、仰臥位(仰向け)で体をリラックスさせます。肩の力を抜き、自然な呼吸を心がけてください。周栄は胸部にあるため、衣類をまくった状態で取穴地点を確認します。

乳頭を基準として、その上方約2肋間(約10cm)上の第2肋間を確認します。前正中線(胸骨の中央)から外側に約9cm(親指幅の約3倍)離れた位置が周栄です。左右両側に存在するため、両方のツボを治療対象とします。

親指または人差し指の指の腹を使用します。爪で傷つけないよう注意してください。手を温めておくと、より効果的です。指に力をすべて込めるのではなく、体重をかけるようにして圧をかけます。

周栄に指を当て、体の内側に向かって約3~5mm程度押し込みます。急激に押すのではなく、3~4秒かけてゆっくりと圧力を加え、その後3~4秒かけてゆっくり圧力を抜きます。「ズーン」とした重い感覚(得気)が現れるのが目安です。

1回のセッションで、1~2分間程度、10~15回の圧迫を目安とします。朝と夜、1日2回の実施が効果的です。症状が強い場合は、1日3回の実施も可能です。ただし、過度な刺激は避け、心地よい範囲での刺激に留めてください。

お灸を用いたセルフケア

周栄は温灸(温和灸)や台座灸による施術に適しており、セルフケアでも用いることができます。

  • 温和灸の方法:温灸用の棒(竹で作られた筒状のもの)の中にもぐさを話め、その温かさで刺激します。肌から約1~1.5cm離して、10~15分間保持します。温かく気持ちよい温度が目安です
  • 台座灸の方法:シールが付いた台座灸を周栄に直接貼り付け、その上に艾草(もぐさ)を乗せて温めます。市販の台座灸を用いれば、手軽に実施できます。1回に1~3壮、1日1回の頻度が適切です
  • 温度の設定:火傷を避けるため、適切な温度を保つことが重要です。熱すぎると感じたら、艾草と肌の間に脱脂綿を挟むなど、温度調整をしてください
  • 実施頻度:症状が軽い場合は週2~3回、症状が強い場合は毎日の実施も可能です。ただし、皮膚の状態を観察しながら調整してください

注意事項:周栄は胸部に位置するため、肋骨や心臓の位置を正確に理解した上で、刺激を行う必要があります。特に、指圧時に強すぎる圧迫を加えると、肋間神経の障害や肋間筋の損傷につながる可能性があります。「心地よい」「気持ちいい」と感じる強度での刺激を心がけ、痛みを感じた場合はすぐに中止してください。また、妊娠中、急性疾患、心臓疾患のある方は、医師や鍼灸師に相談した上で実施してください。

セルフケアの効果を高めるコツ

周栄を用いたセルフケアの効果を最大限に引き出すためのコツを以下に示します:

  • 呼吸との組み合わせ:指圧時に深い腹式呼吸を心がけてください。特に、吸気時に胸を開き、呼気時に圧迫を強めると、より効果的です
  • 温度の活用:刺激前に、温かいタオルで胸部を温めておくと、筋肉がリラックスし、刺激効果が高まります
  • 継続の重要性:1~2回の刺激では効果が薄いため、最低でも1週間、できれば2~4週間の継続が必要です。症状の変化を覷察しながら続けてください
  • 生活習慣の改善:セルフケアと並行して、ストレス管理、適切な睡眠、バランスの良い食事を心がけてください。これらの生活習慣の改善が、周栄の効果を引き出すための基盤となります
  • セルフマッサージの併用:周栄の周囲を軽くマッサージすることで、局所の血液循環がさらに改善され、相乗効果が期待できます

周栄への鍼灸施術(専門家向け情報)

鍼灸師による専門的な施術では、より深い刺激と正確な位置への刺鍼が可能です。以下、専門家向けの情報を提供します。

刺鍼の深さと方向

周栄への刺鍼は、斜刺または平刺で、0.5~0.8寸(約1.5~2.4cm)の深さが適切とされています。

  • 斜刺の場合:肋骨に沿わせるように、やや頭側に向かって刺入します。肋骨に接触しない深さで、大胸筋と肋間筋層の間を狙います
  • 平刺の場合:皮膚に対してほぼ平行に刺入し、肋間のスペースを利用して刺入深度を調整します
  • 深刺の注意:周栄は胸腔内に近い位置にあるため、気胸のリスクを避けるために、過度な深刺は避ける必要がぁります。特に患者の呼吸状態を常に監視し、異常が見られた場合はすぐに対応する体制を整えてください

手技と補瀉法

周栄の治療効果は、用いる手技によって異なります。以下の手技の使い分けが重要です:

  • 補法(ほほう)の適用:脾のエネルギー(正気)が低下している場合、補法を用います。留鍼時間を長めに設定(10~15分)し、温灸を併用することで、温陽補気の効果が得られます
  • 瀉法(しゃほう)の適用:胸部の気の停滞や充血がある場合、瀉法を用います。留鍼時間を短めに設定(5~8分)し、強い刺激を加えることで、気の流通を改善します
  • 平補平瀉法:症状に応じた柔軟な対応が必要な場合は、平補平瀉法を用いることで、患者の状態に適した刺激強度を実現できます

配穴と組み合わせ

周栄の治療効果は、他のツボとの組み合わせにより、さらに高まります。以下に、一般的な配穴を示します:

  • 胸痛の場合:膻中(だんちゅう)、気戸(きこ)、鬼窓(きそう)などと組み合わせます。これらのツボと一緒に用いることで、胸部の気の流通がより効果的に改善されます
  • 咳嗽の場合:尺沢(しゃくたく)、孔最(こうさい)、定喘(ていぜん)などの呼吸器系のツボと組み合わせます
  • 食欲不振の場合:足三里(あしさんり)、三陰交(さんいんこう)、脾兪(ひゆ)などの脾経のツボと組み合わせます
  • ストレス関連症状の場合:心兪(しんゆ)、脾兪(ひゆ)などの兪穴と組み合わせることで、内臓機能の調整効果が高まります

安全性とリスク管理

周栄への鍼灸施術は、正確な技術と安全管理が必須です。以下のリスク管理が重要です:

  • 気胸のリスク:周栄は胸腔に接近した位置にあるため、過度な深刺は気胸(肺が萎縮する疾患)のリスクを招きます。施術者は肋骨の位置を正確に把握し、適切な刺入深度を厳守する必要があります
  • 肋間神経障害:胸部の神経は複雑に走行しているため、刺鍼位置を間違うと神経障害につながる可能性がぁります。正確な取穴が不可次です
  • 出血と内出血:胸部には血管が多く走行しているため、大きな血管に刺入すると出血につながる可能性があります。適切な圧迫止血が必要です
  • 患者の状態確認:施術前に患者の心臓疾患、呼吸器疾患、妊娠の有無などを確認し、必要に応じて医師との連携を図る必要があります

よくある質問

周栄はどのような症状に用いるのですか?

周栄は、胸痛、咳嗽、脇肋脹痛、食欲不振などの症状に用いられます。東洋医学では、肺を宣通し胸部の気の流れを改善し(宣肺理気)、痰を化して咳を止める(化痰止咳)作用があるとされています。特にストレス関連の胸部症状に有効です。

周栄と胸郷の違いは何ですか?

周栄(SP20)と胸郷(SP19)はどちらも足太陰脾経に属し、前正中線の外方6寸に位置していますが、肋間の高さが異なります。周栄は第2肋間に、胸郷は第3肋間に位置しています。周栄はより上方に位置するため、より上部の胸部症状に対して用いられることが多いです。

咳嗽があるときの自宅での指圧の頻度は?

症状が軽い場合は1日1~2回、症状が強い場合は1日2~3回の実施が推奨されます。1回につき10~15回の圧迫を約1~2分間かけて行うのが目安です。ただし、個人の症状に応じて調整してください。継続は最低1週間、理想的には2~4週間の実施をお勧めします。

周栄への指圧は胸痛に効果的ですか?

はい、周栄への指圧は胸痛に効果的です。東洋医学では「宣肺理気」の作用があるとされており、胸部の気の流通を改善して痛みを緩和します。ただし、指圧は軽い胸痛や予防的な使用に効果的であり、激しい胸痛や心臓疾患の場合は医師の診察を受けることをお勧めします。

周栄刺鍼にはどのようなリスクがありますか?

周栄は胸腔に接近した位置にあるため、過度な深刺は気胸のリスクがあります。また、胸部には多くの神経や血管が走行しているため、刺鍼位置を間違うと神経障害や出血につながる可能性があります。専門的な知識と技術を持つ鍼灸師による施術が推奨されます。

まとめ

周栄(SP20)は、足太陰脾経に属する重要なツボで、第2肋間、前正中線の外方6寸に位置しています。東洋医学では「宣肺理気」「化痰止咳」の効能を持つとされており、胸痛、咳嗽、脇肋脹痛、食欲不振などの多くの症状に対して用いられます。

現代のストレス社会では、精神的なストレスによる胸部の違和感が増加しており、周栄はそうした症状の改善に極めて有効なツボです。セルフケアとしても指圧やお灸により、自宅で簡便に実施できることが利点です。

ただし、周栄は胸腔に接近した位置にあるため、過度な刺激は避け、「心地よい」「気持ちいい」と感じる強度での刺激に留めることが重要です。症状が強い場合や改善しない場合は、鍼灸師や医師に相談し、専門的な施術を受けることをお勧めします。

周栄を用いたセルフケアと、生活習慣の改善(ストレス管理、適切な睡眠、バランスの良い食事)を組み合わせることで、胸部の不快感を根本的に改善し、心身の健康と快適さを取り戻すことができます。

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この記事を書いた人

「医師×鍼灸師プラットフォーム HARI×MED」管理者。クリニックと併設鍼灸院を経営。医師と鍼灸師のコラボレーションが患者さんの健康や幸せに寄与すると考え、鍼灸のファンを増やす活動を通じて受療率向上を目指しています。持続可能な医療連携モデルの構築を全国で支援する取り組みとして、ハリメドを運営しています。

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