大包(SP21)は、足太陰脾経に属する最後の穴位で、脾経の「大絡」として全身の絡脈を統括する重要なツボです。東洋医学では「宣肺理気」「活血通絡」「総絡諺経」の効能があるとされており、胸脇部痛や全身倦怠感、四肢無力といった症状に対して用いられています。本記事では、大包の正確な位置から効果、自宅でのセルフケア方法まで、詳しく解説します。
大包(SP21)とは?基本情報と特徴
大包(だいほう)は、足太陰脾経に属する穴位で、脾経の第21番目、つまり最終の穴位です。その名前「大包」は、脾経の「大絡(たいらく)」という特殊な機能を持つことに由来しています。大絡とは、各経絡から分岐した絡脈を統括し、全身の絡脈を包含するという意味です。
東洋医学の古典である『鍼灸甲乙経』や『経穴歌』によれば、大包は脾経の「絡脈」として機能し、12正経から分岐した絡脈のすべてを統括するとされています。つまり、大包は単なる1つのツボではなく、全身の気血流通を調整する枢要なツボとして位置づけられています。
現代の鍼灸臨床においても、大包は胸脇部痛、全身倦怠感、四h��無力、喘息などの全身症状や呼吸器系の症状に対する治療穴として、極めて重要な僄ボとして認識されています。特に、脾経の最後の穴位として、脾経の機能を総括する重要な役割を担っており、脾の気の虚弱や気血流通の不暢に対して、顕著な効果を発揮します。
大包の場所と取り方
大包の正確な位置を理解することは、セルフケアの効果を高めるために重要です。以下、詳細な取穴法を説明します。
解刖学的位置
大包は第6芋間、中腋窩線上(腋窩中点の下方6寸)に位置しています。これは以下のように理解できます:
- 上下方向:脇の下から下方へ、第6肋間に位置しています。腋の中点よりもやや下方に位置しており、肋骨に沿った取穴地点です
- 左右方向:中腋窩線(腋の中央を通る垂直線)上に位置しており、体の側面部に位置しています。前正中線から数えると、約12寸程度隢れた位置です
- 層構造:皮芚の深さ約0.8~1.2寸(約2.4~3.6cm)の深さで、前鋷筋(ぜんのこぎりきん)層に位置しています。この筋肉の深部に位置するため、刺激時の正確な位置把握が重要です
SP19(胸ჷ)との位置関係
大包(SP21)は、同じ脾経に属するSP19(胸郷)やSP20(周栄)よりも下方かつ外側に位置しています。このため、胸部よりも脇腴から側胸部にかけての症状に対して、より直接的に作用するツボとされています。
| 項目 | 詳細 |
| ツボの名前 | 大包(だいほう/たいほう) |
| 所属経絡 | 足太陰脾経(あしたいいんひけい) |
| WHO表記 | SP21 |
| 取穴部位 | 第6肋間、中腋窩線上 |
| 筋肉 | 前鋸筋(ぜんのこぎりきん) |
| 神経 | 長胸神経、肋間神経 |
| 血管 | 胸背動脈、肋間動脈 |
| 刺鍼の深さ | 斜刺または平刺0.8~1.2寸(深刺厳禁) |
| お灸の適否 | 適(温和灸または台座灸を推奨) |
| 脾経での位置 | 脾経の第21番目(最終穴位) |
| 特殊機能 | 脾の大絡:全身の絡脈を統括 |
取穴のランドマーク
実際に大包を見つけるためのランドマークは以下の通りです:
- 患者を座位または側臥位にして、腕を自然に下ろします
- 腋窩(脇の下)の最深部を基準とします
- 腋窩中点を確認し、そこから下方へ約6寸(約18cm)下った位置に大包が位置します
- 中腋窩線(脇の中央を通る垂直線)に沿って、第6肋間を確認します
- 肋骨と肋骨の間、第6と第7芋骨の間に位置していることが確認できます
- 指��軽く触診すると、やや陥凹した位置に大包が確認されます

大包の効果・効能
東洋医学的効能
大包は東洋医学において、以下の機能を持つとされています:
宣肺理気(せんはいりきき):この言葉は「肺を宣通し、気の流れを整える」という意味です。大包は脾経の最終穴位として、脾と肺の気機を調整し、全身の気の流通を改善します。特に、気の停滞による胸脇部痛や呼吸困難に対して有効とされています。
活血通絡(かっけつつうらく):この言葉は「血流を活発にし、絡脈を通す」という意味です。大包は脾の大絡として、全身の絡脈の流通を促進し、瘀血(血液の停滞)を改善します。これにより、胸脇部痛や四肢の無力感が緩和されます。
総絡諸経(そうらくしょけい):この言葉は「すべての絡脈を統括する」という意味です。大包は脾経の大絡として、12正経から分岐した絡脈のすべてを統括し、全身の気血流通の枢要な調整機能を担います。これにより、全身倦怠感や虚弱体質の改善に用いられます。
適応症状の詳細
大包が用いられる主な症状は以下の通りです:
- 胸脇部痛(胸脇苦渀):胸脇部の苦しい痛みや圧迫感。気の流通不暢による症状に用いられます
- 全身倦怠感:全身の疲労感やだるさ。脾の気虚による症状に用いられます
- 四肢無力:腕や脚の無力感。気血不足による症状に用いられます
- 喘息(ぜんそく):呼吸が苦しい症状。脾肺の気の虚弱に用いられます
- 呼吸困難(息切れ):息苦しさや息切れ。気の循環不暢に用いられます
- 脇腹痛:脇腹部の痛み。瘀血や気の停滞に用いられます
- 虚弱体質:全体的な体力の低下。脾の気虚に用いられます
- 疲労の回復:運動後や仕事後の疲労の改善に用いられます
現代医学的知見
現代医学の観点から、大包への鍼灸刺激は以下のようなメカニズムで効果を発揮すると考えられています:
神経生理学的メカニズム:大包の周囲には、長胸神経と肋間神経が走行しています。これらの神経領域への刺激は、脊髄ルベルでの疼痛緩和を引き起こします(ゲートコントロール説)。また、鍼灸刺激は脳脊髄液内のエンドルフィンやセロトニンなどの神経伝達物質の分泌を増加させ、全身の疲労感を改善します。
循環系への影響:大包への刺激は、局所の血液循環を改善し、前鋸筋や肋間筋の過緊張を緩和します。特に、脇腹部の血液流通が改善されることで、胸脇部痛が軽減されます。
呼吸機能への影響:肋間筋や前鋸筋の緊張が緩和されることで、呼吸の深さが改善され、肺活量が向上します。これにより、喘息や呼吸困難が改善されます。
全身倦怠感への効果:大包は脾経の最終穴位として、脾の気の虚弱を裛い、全身の気血流通を改善します。これにより、疲労感やだるさが根本的に改善されます。
大包の押し方・指圧方法
大包は自宅でのセルフケアが可能なツボです。以下の方法を参考に、正しい刺激方法を実践してください。
指圧による押し方
椅子に座るか、側臥位(横向き)で体をリラックスさせます。肩の力を抜き、自然な呼吸を心がけてください。大包は脇腹部にあるため、衣類をまくった状態で取穴地点を確認します。
脇の下(腋窩)の中央を基準として、そこから下方へ約6寸(約18cm)下った位置を確認します。中腋窩線に沿って、第6肋間を探ります。肋骨と肋骨の間に位置する、やや陥出した場所が大包です。

