三陰交(SP6)の場所・効果・押し方|月経痛・月経不順・不妊に用いるツボを鍼灸師が解説

三陰交(さんいんこう)は足の太陰脾経の第6穴で、脾経・肝経・腎経の三陰経が交会する極めて重要な経穴です。婦人科疾患の「要穴中の要穴」として古来より重用され、月経不順・月経痛・不妊・更年期障害・消化器症状・泌尿器症状・不眠など、広範な適応を持つ鍼灸臨床における最重要穴の一つです。

この記事では、三陰交の正確な位置・解剖学的構造・取穴法・刺鍼パラメータ・適応症状とそのメカニズム・セルフケア方法・鍼灸師向けの臨床情報・科学的エビデンスまでを網羅的に解説します。

※本記事の内容は教育・情報提供を目的としており、特定の症状に対する治療効果を保証するものではありません。実際の施術は必ず有資格者のもとで行ってください。

項目内容
穴名(読み)三陰交(さんいんこう)
英語名Sanyinjiao
所属経絡足の太陰脾経(21穴中 第6穴)
WHOコードSP6
穴性健脾益気・調肝補腎・活血調経・利水滲湿・安神助眠
主治月経不順・月経痛・不妊・更年期障害・腹脹・泄瀉・遺尿・不眠・下肢痛・湿疹
目次

正確な位置と解剖学的構造

三陰交は下腿内側、脛骨内縁の後際、内果尖の上方3寸に位置します。内ph –>

内果尖から上方に指幅4本分(示指〜小指の4指幅≒3寸)の距離を取ります。本人の指で計測するのが最も正確です。

脛骨内縁の後際を取る

計測した高さで脛骨の内側縁を触知し、その後縁のすぐ後ろにある陥凹を確認します。脛骨の骨縁に指が引っかかるように当てると正確に取穴できます。

圧痛を確認する

陥凹部を親指で押して圧痛を確認します。三陰交は圧痛の出やすい経穴であり、特に婦人科症状や消化器症状がある場合には顕著な圧痛が認められます。左右の圧痛の差も臨床的な情報として有用です。

取穴のコツ

三陰交の「3寸」の計測は骨度法に基づきます。内果尖から膝窩横紋(陰陵泉SP9レベル)までの距離を13寸とし、その3/13が内果尖から三陰交までの距離です。実臨床では4横指法が簡便ですが、患者の体格によるばらつきを考慮し、圧痛の確認を必ず併用してください。脛骨内縁の「後際」を正確に取ることが重要で、骨の上に乗ってしまうと別の経穴になる可能性があります。

三陰交は鍼灸臨床で最も使用頻度の高い経穴の一つであり、正確な取穴は全鍼灸師の必須スキルです。脛骨内縁の後際に指を滑り込ませる感覚を身体で覚え、素早く正確に取穴できるよう繰り返し練習してください。

刺鍼・施術法

パラメータ推奨値
刺入方向直刺(脛骨後縁に沿って)
標準刺入深度1.0〜1.5寸(約20〜30mm)
最大刺入深度2.0寸(約40mm)
手技補法が基本(脾虚・肝血虚・腎虚に対して)。実証には瀉法。得気を重視
灸法艾炷灸 5〜7壮、または温灸 20〜30分。婦人科疾患には灸が特に有効
通電(パルス)月経痛・分娩促進の研究で2/100Hz交代波の通電が報告されている
留鍼時間20〜30分
施術上の注意

妊娠中の三陰交への刺鍼・灸は原則禁忌です。三陰交は子宮収縮を促進する作用があるとされ、妊娠初期〜中期の流産リスク、後期の早産リスクが指摘されています。ただし、正期産の分娩促進を目的とした使用は臨床的に行われることがあり、これは産科医との連携のもとで行います。後脛骨動脈が深層を走行するため、深刺の際は動脈損傷に注意してください。大伏在静脈が浅層を走行するため、表在性の血管を避けて刺入します。

三陰交は得気が得られやすい経穴であり、適切に刺鍼すると下腿内側から足部または下腹部にかけて響く感覚(放散感)が生じます。この得気の方向は治療効果の指標となり、下腹部への放散は婦人科症状への効果を示唆するとされています。

安全刺入深度と危険構造

三陰交の深層には後脛骨動脈・静脈と脛骨神経が走行しています。2.0寸を超える深刺はこれらの構造を損傷するリスクがあるため避けてください。脛骨内縁に沿って刺入し、脛骨面を滑るような角度で進めると安全です。大伏在静脈が浅層に走行するため、刺入前に血管の位置を視認・触診で確認します。

効く症状・効果

三陰交(SP6)が適応する主な症状

症状メカニズム併用推奨穴
月経不順脾・肝・腎の三陰経を同時に調節し、衝任脈の気血を整える。調経の要穴関元(CV4)・血海(SP10)・気海(CV6)
月経痛(生理痛)肝の疏泄を促し気滞血瘀を解消。脾の統血と腎の温煦で子宮の気血循環を改善関元(CV4)・地機(SP8)・次髎(BL32)
不妊腎精を補い衝任脈を充実させる。脾の運化で後天の気血を補充し生殖機能を支援関元(CV4)・子宮(EX-CA1)・腎兪(BL23)
更年期障害腎陰虚と肝陽上亢を同時に調整。三陰経のバランスを回復しホットフラッシュ・不眠・イライラを緩和太渓(KI3)・太衝(LR3)・神門(HT7)
消化不良・腹脹脾の運化機能を健全化し中焦の湿滞を除去。三陰交は脾経に所属するため脾虚にも対応足三里(ST36)・中脘(CV12)・太白(SP3)
遺尿・頻尿腎の固摂作用を強化し膀胱の気化機能を改善。脾腎両虚の泌尿器症状に有効関元(CV4)・腎兪(BL23)・中極(CV3)
不眠心脾両虚・肝血虚による不眠を改善。三陰の調和で陰を養い安神する神門(HT7)・百会(GV20)・安眠(EX-HN22)
湿疹・皮膚搔痒脾の運化で湿邪を除去し、血虚生風による搔痒を改善。健脾利湿・養血祛風血海(SP10)・曲池(LI11)・風市(GB31)
古典文献の記載

『鍼灸甲乙経』:「足下熱、痛不能久立、湿痺不能行……三陰交主之」。『備急千金要方』:「女人漏下赤白、月水不利……灸三陰交」。婦人科と下肢の症状が古典から一貫して主治として記載されており、三陰交の臨床的地位の揺るぎなさを示しています。

三陰交は鍼灸臨床において「万能穴」に最も近い経穴の一つです。婦人科・消化器・泌尿器・精神神経の各領域にまたがる広範な適応は、三陰経の交会穴という経絡学的特性によって裏付けられています。特に婦人科疾患における三陰交の重要性は他の追随を許さず、「婦人科の要穴と言えば三陰交」と言っても過言ではありません。

自分でできるセルフケア

方法①:指圧法(月経痛・月経不順・むくみ・倦怠感の緩和)

楽な姿勢をとる

椅子に座るか床に座り、ふくらはぎの内側にアクセスしやすい姿勢をとります。

内果から指幅4本分上を確認する

足首の内側の骨の突起(内果)の先端に小指を当て、人差し指まで4本分の指幅を上方に取ります。人差し指の位置で脛骨の後ろ際にある凹みが三陰交です。

持続圧を加える

反対側の手の親指で「痛気持ちいい」程度の強さで5〜7秒間押し、3秒休むサイクルを10〜15回繰り返します。月経痛には月経開始前3日〜月経期間中に毎日行うと効果的です。

反対側も同様に行う

左右両方の脚に同じ手順で行います。日常的な健康管理として毎日就寝前に行うと、睡眠の質の向上やむくみの軽減にも役立ちます。

方法②:せんねん灸(冷え性・月経不順・不妊のサポート)

台座灸を用意する

市販のせんねん灸(レギュラー〜ソフト)を用意します。三陰交は灸の効果が高い経穴として知られ、冷え性や月経不順には灸法が特に推奨されます。

正確に位置を確認して貼付する

内果上方3寸(指幅4本分)の脛骨後際の凹みにせんねん灸を貼り、着火します。関元(CV4・下腹部)への施灸を併用すると子宮を温める効果が高まります。

心地よい温熱を感じたら終了

3〜5分程度で温熱を感じます。熱すぎる場合はすぐに取り外してください。1日1回、両側に施灸します。月経周期に合わせて排卵期〜黄体期に集中的に行うと効果的とされています。

セルフケアの注意

妊娠中の方は三陰交への指圧・灸を行わないでください。三陰交は子宮収縮を促進する可能性があり、流産・早産のリスクが指摘されています。月経不順が長期間続く場合や不妊でお悩みの場合は、必ず婦人科を受診し適切な検査を受けたうえで鍼灸治療を併用してください。下肢静脈瘤がある場合は、静脈上への灸を避けてください。

鍼灸師・学生向け

項目内容
五兪穴分類(五兪穴には該当しない)
交会穴足の太陰脾経・足の厥陰肝経・足の少陰腎経の三陰経交会穴
特定穴としての意義三陰経の交会穴として婦人科疾患の第一選択穴。脾・肝・腎の三臓を同時に調節する唯一の経穴
要穴処方例①月経痛:三陰交+関元(CV4)+地機(SP8)+次髎(BL32)——調経止痛・活血化瘀
要穴処方例②脾虚泄瀉:三陰交+足三里(ST36)+天枢(ST25)+脾兪(BL20)——健脾益気・止瀉
要穴処方例③更年期不眠:三陰交+神門(HT7)+太渓(KI3)+百会(GV20)——滋陰降火・安神
配穴の根拠三陰交は脾・肝・腎の三陰経を調節する交会穴。関元は任脈と三陰経の交会穴で衝任を固摂。足三里は胃経合穴で脾胃同治。太渓は腎経原穴で腎陰を滋養
臨床のポイント

三陰交の臨床運用は多岐にわたりますが、核心は「三陰経の同時調節」にあります。月経不順では肝の疏泄・脾の統血・腎の蔵精のバランスを、消化器症状では脾の運化を中心に肝の疏泄を補助的に、泌尿器症状では腎の気化を中心に脾の固摂を補助的に調節します。治療目的によって補瀉の手技を変え、配穴を工夫することで三陰交の多面的な治療効果を最大限に引き出せます。妊娠中は禁鍼穴として厳守してください。

三陰交は鍼灸臨床において最も処方頻度の高い経穴の一つであり、ほぼすべての婦人科疾患の基本処方に含まれます。初学者は三陰交を軸とした配穴パターンを体系的に学ぶことで、臨床力の基盤を効率的に構築できます。「三陰交を制する者は婦人科を制す」と言われる所以です。

科学的エビデンス

月経痛に対する鍼治療

原発性月経困難症に対する三陰交への鍼治療は、複数のRCTとシステマティックレビューで有効性が報告されています。Cochrane ReviewおよびSmith CA et al.(2016, Cochrane Database Syst Rev)では、鍼治療が月経痛のVASスコアを有意に改善したと結論しています。三陰交は月経痛研究で最も頻用される経穴であり、エビデンスの蓄積が進んでいます。

分娩誘発・陣痛促進

三陰交への鍼刺激が子宮収縮を促進し、分娩時間を短縮する可能性を示す臨床研究が報告されています。正期産における分娩促進を目的とした三陰交の使用は中国・韓国を中心に研究されていますが、方法論的に質の高いRCTはまだ限られており、ルーチン使用を推奨するには至っていません。

不眠に対する鍼治療

三陰交を含む経穴処方が不眠症のピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)スコアを改善したとするRCTが複数報告されています。三陰交の刺鍼が血中メラトニン濃度を上昇させたとする報告もあり(Spence DW et al., 2004, J Clin Psychiatry)、睡眠調節への関与が示唆されています。

エビデンスの評価

三陰交は鍼灸研究で最も多く取り上げられる経穴の一つであり、月経痛に対するエビデンスは比較的高いレベルで蓄積されています。不妊治療・分娩促進・不眠に対する効果も有望ですが、大規模で方法論的に厳密なRCTは引き続き必要です。「使用されている」「報告されている」という記述は臨床での運用実績を示すものであり、標準的な西洋医学的治療の代替を意味するものではありません。

よくある質問

三陰交の正確な位置はどうやって見つけますか?

足首の内側の骨の突起(内果)の先端から指幅4本分(約3寸)上方で、脛骨(すねの骨)の内側縁のすぐ後ろにある凹みです。押すとズーンとした圧痛を感じる場所が三陰交です。

三陰交はどんな症状に使用されますか?

月経不順・月経痛・不妊・更年期障害などの婦人科症状を中心に、消化不良・むくみ・頻尿・不眠・皮膚の痒みなど、脾・肝・腎の三臓に関連する幅広い症状に使用されます。「婦人科の要穴」として最も有名な経穴です。

妊娠中に三陰交を押してもいいですか?

妊娠中の三陰交への指圧・灸・鍼は原則として避けてください。三陰交は子宮収縮を促進する可能性があるとされ、流産や早産のリスクが指摘されています。正期産での分娩促進に使用される場合がありますが、これは必ず医療者の管理下で行われるものです。

三陰交のセルフケアは生理痛にどのくらいで効きますか?

指圧による即時的な緩和効果を感じる方もいますが、体質改善には継続が重要です。月経開始の3日前から毎日指圧やせんねん灸を行い、2〜3周期続けると月経痛の軽減を実感する方が多いとされています。灸法は特に冷え性を伴う月経痛に対して効果的です。

三陰交への鍼は痛いですか?

三陰交は刺入時に軽い痛みを感じることがありますが、深刺するとズーンとした独特の響き(得気)が下腹部や足に広がることがあります。この感覚は治療効果の指標とされ、多くの患者さんが慣れると心地よく感じます。セルフケアでは指圧や灸法を選択すれば鍼の痛みを避けられます。

まとめ

三陰交(SP6)は足の太陰脾経の第6穴であり、脾・肝・腎の三陰経が交会する鍼灸臨床における最重要穴の一つです。月経不順・月経痛・不妊・更年期障害などの婦人科疾患を中心に、消化器・泌尿器・精神神経の各領域にまたがる広範な適応を持ちます。

セルフケアでは指圧法とせんねん灸が効果的で、特に冷え性を伴う婦人科症状には灸法が推奨されます。ただし、妊娠中の使用は禁忌です。症状が続く場合は必ず専門医を受診し、適切な診断のうえで鍼灸治療を併用してください。

※本記事は鍼灸師・医療従事者の監修のもと作成されています。経穴の位置・刺鍼法は教科書的な標準に基づいていますが、個人の体格や体質によって微調整が必要な場合があります。

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この記事を書いた人

「医師×鍼灸師プラットフォーム HARI×MED」管理者。クリニックと併設鍼灸院を経営。医師と鍼灸師のコラボレーションが患者さんの健康や幸せに寄与すると考え、鍼灸のファンを増やす活動を通じて受療率向上を目指しています。持続可能な医療連携モデルの構築を全国で支援する取り組みとして、ハリメドを運営しています。

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