はじめに
足少陽胆経(Gallbladder Meridian, GB)は、五行では木に属し、臓腑では胆に対応する経脈です。胆は「中正の官」として決断を主り、筋の疏泄・少陽相火の枢機を担います。肝経(LR)と表裏関係にあります。風池(GB20)は頭痛・頸肩痛・眼疾患の代表穴として世界的に最も研究された穴の一つ。陽陵泉(GB34)は筋の会穴として運動器疾患全般に必用です。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 経脈名 | 足少陽胆経 |
| 英名 | Gallbladder Meridian of Foot-Shaoyang |
| 略称 | GB |
| 五行 | 木(もく) |
| 陰陽 | 陽経 |
| 表裏経 | 足厥陰肝経(LR) |
| 経穴数 | 44穴 |
| 起始穴 | 瞳子髎(GB1) |
| 終止穴 | 足竅陰(GB44) |
循行ルート(WHO/ISO 2008標準)
胆経は外眼角(瞳子髎GB1)から起こり、側頭部を複雑に蛇行して風池(GB20)に至り、頸肩部から缺盆に入ります。体幹では脇腹部を下行し、股関節外側(環跳GB30)から大腿外側・膝関節外側(陽陵泉GB34)・下腿外側・外果前(丘墟GB40)を経て第4趾外側端(足竅陰GB44)で終わります。
主要経穴一覧
| 番号 | 穴名 | 読み | 部位概要 | 主治・分類 |
|---|---|---|---|---|
| GB1 | 瞳子髎 | どうしりょう | 外眼角外方0.5寸 | 眼疾患・頭痛・顔面神経麻痺 |
| GB2 | 聴会 | ちょうえ | 耳珠間切痕前方陥中(開口時) | 耳鳴・難聴・顎関節症 |
| GB14 | 陽白 | ようはく | 眉上方1寸、瞳孔線上 | 眼疾患・顔面神経麻痺・頭痛 |
| GB20 | 風池 | ふうち | 後頭骨下、僧帽筋と胸鎖乳突筋間陥中 | 頭痛・頸肩痛・眼疾患・外感(祛風要穴) |
| GB21 | 肩井 | けんせい | 大椎と肩峰端の中点 | 頸肩痛・難産・催乳(妊婦禁忌) |
| GB24 | 日月 | じつげつ | 第7肋間、前正中線外方4寸 | 胆疾患・黄疸(胆の募穴) |
| GB25 | 京門 | けいもん | 第12肋骨先端下縁 | 腰痛・腎疾患(腎の募穴) |
| GB26 | 帯脈 | たいみゃく | 第11肋骨先端直下、臍水平線上 | 帯下・月経不順(帯脈との交会穴) |
| GB29 | 居髎 | こりょう | 腸骨前上棘と大転子を結ぶ中点 | 股関節痛・下肢麻痺 |
| GB30 | 環跳 | かんちょう | 大転子最高点と仙骨裂孔を結ぶ外1/3点 | 坐骨神経痛・股関節疾患・下肢麻痺 |
| GB31 | 風市 | ふうし | 大腿外側中央、膝蓋骨上縁上方7寸 | 下肢麻痺・蕁麻疹 |
| GB33 | 膝陽関 | しつようかん | 腓骨頭前上方陥中 | 膝関節痛 |
| GB34 | 陽陵泉 | ようりょうせん | 腓骨頭前下方陥中 | 筋疾患全般・胆疾患(合穴・土・筋の会穴) |
| GB37 | 光明 | こうめい | 外果尖上方5寸、腓骨前縁 | 眼疾患・下肢麻痺(絡穴) |
| GB38 | 陽輔 | ようほ | 外果尖上方4寸、腓骨前縁 | 頭痛・胸脇痛(経穴・火) |
| GB39 | 懸鐘 | けんしょう | 外果尖上方3寸、腓骨前縁 | 頸肩痛・脳卒中(髄の会穴) |
| GB40 | 丘墟 | きゅうきょ | 外果前下方陥中 | 足関節炎・胸脇痛(原穴) |
| GB41 | 足臨泣 | あしりんきゅう | 第4・5中足骨底接合部前陥中 | 偏頭痛・月経不順(兪穴・木・八脈交会穴) |
| GB43 | 侠谿 | きょうけい | 第4・5趾間、趾蹼縁後方 | 頭痛・耳鳴・発熱(滎穴・水) |
| GB44 | 足竅陰 | あしきょういん | 第4趾末節外側、爪角旁0.1寸 | 頭痛・耳鳴(井穴・金) |
要穴まとめ
| 要穴分類 | 穴名 | 番号 | 五行 |
|---|---|---|---|
| 井穴 | 足竅陰 | GB44 | 金 |
| 滎穴 | 侠谿 | GB43 | 水 |
| 兪穴 | 足臨泣 | GB41 | 木 |
| 経穴 | 陽輔 | GB38 | 火 |
| 合穴 | 陽陵泉 | GB34 | 土 |
| 原穴 | 丘墟 | GB40 | — |
| 絡穴 | 光明 | GB37 | — |
| 郄穴 | 外丘 | GB36 | — |
| 募穴 | 日月 | GB24 | — |
| 背部兪穴 | 胆兪 | BL19 | — |
臨床での主な使いどころ
風池(GB20)は「一切の風証に用いる」祛風要穴として、頭痛・頸肩痛・眼疾患・外感疾患・脳血管疾患後遺症に必用です。陽陵泉(GB34)は筋の会穴(八会穴)として、筋肉疾患全般(痙攣・萎縮・拘縮)・胆嚢疾患・膝関節疾患に用います。環跳(GB30)は坐骨神経痛・股関節疾患の局所穴として不可欠。足臨泣(GB41)は八脈交会穴(帯脈)として月経不順・偏頭痛に外関(TE5)と配穴されます。懸鐘(GB39)は髄の会穴として脳血管疾患・骨髄疾患に重要です。
臨床エビデンス
【偏頭痛予防への風池・陽陵泉】Linde et al.(2016, Cochrane Database)の22 RCT・n=4,985のメタアナリシスでは、鍼治療(風池・陽陵泉を含む)が偏頭痛発作頻度を予防的薬物療法と同等以上に低下させることが示されました。【膝変形性関節症への陽陵泉・足三里】Acupuncture Trialists’ Collaboration(2018, J Pain)では変形性膝関節症に対する鍼治療が偽鍼・通常治療と比較して疼痛・機能改善で有意かつ持続的な効果を示しました。【頸肩痛への風池・肩井】Trinh et al.(2007, J Gen Intern Med)のメタアナリシスでは風池・肩井を含む選穴による鍼治療が慢性頸肩痛の疼痛スコアを対照群と比較して短期・長期ともに有意に改善しました。
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著者:ハリメド編集部|現役医師監修
