🔍 肩の痛みとは? ― 東洋医学の視点
肩の痛みは「肩こり」とは異なり、関節や筋腱の炎症・損傷に伴う明確な疼痛を指します。東洋医学では「肩痺(けんぴ)」と呼び、風・寒・湿の邪気が肩関節に侵入して経絡を阻滞させるか、外傷や慢性的な使い過ぎで気血が瘀滞することが原因と考えます。肩には大腸経・小腸経・三焦経・胆経など多くの経絡が集まるため、痛む部位によって関連する経絡が異なります。
肩を上げると痛い / 夜間に肩がうずく / スポーツで肩を痛めた / 腕を後ろに回せない
📋 弁証タイプ別チェック
| 弁証タイプ | 主な症状 | 舌診・脈診の目安 |
|---|---|---|
| 風寒湿痺(ふうかんしっぴ)型 | 冷え・天候で悪化、温めると楽、肩全体の鈍痛 | 舌淡苔白膩、脈浮緊 |
| 気滞血瘀(きたいけつお)型 | 刺すような痛み・固定痛、夜間悪化、打撲後の痛み | 舌暗紫・瘀斑、脈渋 |
| 痰湿阻絡(たんしつそらく)型 | 重だるい痛み、肩が腫れぼったい、雨天悪化 | 舌胖・苔白膩、脈滑 |
| 肝腎不足(かんじんぶそく)型 | 慢性的な鈍痛、肩の筋力低下、腰膝もだるい | 舌淡紅、脈沈細 |
🎯 肩の痛みに効くツボ8選
① 肩井(けんせい)GB21 ― 肩の痛み治療の要
取穴:大椎穴と肩峰の中点、僧帽筋上。

効能:祛風活絡・散寒止痛。肩部の気血の巡りを改善する最重要穴。肩の痛み・こりのあらゆるタイプに使えるファーストチョイスです。
押し方:反対の手の中指で肩井をゆっくり押さえ、5秒押して3秒離す。5回繰り返し。
② 肩外兪(けんがいゆ)SI14 ― 肩甲骨上部の痛みに
取穴:第1胸椎棘突起の下、外側3寸。肩甲骨内上角の近く。

効能:舒筋活絡・祛風除湿。小腸経のツボで、肩甲骨上部〜肩にかけての痛みに特効。腕を上げると痛むタイプに最適です。
押し方:テニスボールを壁と背中の間に挟み、肩甲骨上角付近を刺激。30秒×3セット。
③ 肩髃(けんぐう)LI15 ― 肩関節の痛みに直接アプローチ
取穴:腕を水平に上げたとき、肩の前面にできる2つの窪みのうち前方。三角筋前部。
効能:通経活絡・祛風利湿。大腸経の要穴で、肩関節の痛み・運動制限に直接作用します。五十肩の代表的治療穴でもあります。
押し方:反対の手の指で肩の前面を探り、窪みを見つけたら5秒間押圧。5回。腕をゆっくり回しながら行う。
④ 曲池(きょくち)LI11 ― 肘から肩へ気血を通す
取穴:肘を曲げたとき、横紋の外端。肘の外側の窪み。

効能:清熱利湿・調和気血。大腸経の合穴で、肘から肩にかけての経絡を通じて肩の痛みを緩和。炎症を伴う肩痛に効果的です。
押し方:親指で肘の窪みを押し込み、5秒保持。8回。
⑤ 外関(がいかん)TE5 ― 三焦経を通じて肩外側の痛みに
取穴:手首の背面、横紋から指3本分上、2本の骨の間。

効能:祛風散寒・通絡止痛。三焦経の絡穴で、肩の外側〜腕の痛みに効果的。風寒による肩痛の治療に重要なツボです。
押し方:親指で骨の間を押し込み、5秒×5回。手を回しながら行うと効果的。
⑥ 後谿(こうけい)SI3 ― 小腸経を通じて肩背部の痛みに
取穴:手を軽く握り、小指側の横紋の端、赤白肉際。

効能:通督脈・舒筋絡。小腸経は肩甲骨を通過するため、肩の後面〜肩甲骨周りの痛みに卓効。デスクワーカーの肩痛に最適です。
押し方:後谿を押しながら肩をゆっくり回す。前回し・後ろ回し各5回。
⑦ 陽陵泉(ようりょうせん)GB34 ― 筋腱の痛みに効く「筋会」
取穴:膝の外側、腓骨頭の前下方の陥凹部。

効能:舒筋壮骨・清利肝胆。八会穴のひとつ「筋会」として、全身の筋腱の問題に効果を発揮。腱板損傷や筋緊張による肩痛に根本からアプローチ。
押し方:親指でしっかり押し込み、10秒保持。5回。
⑧ 合谷(ごうこく)LI4 ― 痛みを鎮める万能穴
取穴:手の甲、親指と人差し指の骨が交わる手前の筋肉。

効能:通経活絡・鎮痛止痛。四総穴のひとつで「面目は合谷に収む」と称され、上半身の痛み全般に強力な鎮痛作用を発揮します。
押し方:反対の手で挟むように強めに押す。10秒×5回。肩を動かしながら行うと相乗効果。
🌿 肩の痛みセルフケア・ルーティン
🌅 朝のルーティン(5分)
- 肩井+肩回し(2分):肩井を押さえながら肩を大きく前後に回す。各5回
- 後谿+首肩ストレッチ(2分):後谿を押しながら首を左右に倒す→肩を上下に動かす
- 合谷指圧(1分):合谷を左右各5回ずつしっかり押して気血を巡らせる
🌙 夜のルーティン(5分)
- テニスボールで肩外兪(2分):壁にテニスボールを挟み、肩甲骨上部をほぐす
- 外関+肩回旋(1.5分):外関を押しながら腕をゆっくり外旋・内旋。各5回
- 陽陵泉+ストレッチ(1.5分):陽陵泉を指圧しつつ、腕を体の前で水平に伸ばすクロスストレッチ
📚 エビデンス・研究報告
- Green S et al. (2005) “Acupuncture for shoulder pain” Cochrane Database of Systematic Reviews — 鍼治療が肩痛のVASスコアと可動域を有意に改善
- Molsberger AF et al. (2010) “Acupuncture points in shoulder pain treatment” Clinical Journal of Pain — 肩井・肩髃・曲池への鍼刺激が偽鍼より有意に効果的(p<0.01)
- 日本整形外科鍼灸研究会 (2022) — 肩関節痛に対する鍼灸治療の推奨グレードB
🔗 関連する症状別ツボガイド
❓ よくある質問(FAQ)
肩こりと肩の痛みの違いは何ですか?
肩こりは僧帽筋を中心とした筋緊張による不快感で、肩の痛みは関節・腱・滑液包などの炎症や損傷に伴う疼痛です。両者は併発することも多いですが、治療アプローチが異なります。
夜間に肩が痛くて眠れません。どうすればよいですか?
夜間痛は肩関節周囲炎(五十肩)の特徴です。抱き枕で腕を支える姿勢で寝る、就寝前にツボ押しと温めを行うことで改善できることがあります。長期間続く場合は整形外科を受診してください。
運動後の肩痛にもツボ押しは有効ですか?
急性の炎症期(腫れ・熱感がある時期)は冷却を優先し、ツボ押しは炎症が落ち着いてから行いましょう。慢性期の痛みやこわばりにはツボ刺激が非常に効果的です。
肩の可動域を広げるにはどうすればよいですか?
ツボ押し(特に肩髃・肩井)で筋緊張を緩めた後、壁を使ったウォールクライミング(指で壁を這い上がる運動)や振り子運動を行うと可動域が徐々に広がります。
