乗り物酔いやストレス、食べすぎなどで起こる吐き気(悪心)。東洋医学では「胃気上逆(いきじょうぎゃく)」――本来下向きに流れるべき胃の気が逆流している状態と捉えます。ここでは、セルフケアとして安全に押せるおすすめのツホを3つ厳選し、正しい位置と押し方をわかりやすく解説します。
吐き気と東洋医学
東洋医学では、吐き気は「胃」と「脾」の機能失調が主な原因と考えます。飲食不節(暴飲暴食)、寒邪の侵入(お腹の冷え)、肝気の横逆(ストレスによる胃への影響)などにより、胃気の下降機能が障害されると吐き気が生じます。
ツボ押しで胃気の下降を助け、自律神経のバランスを整えることで、軽度の吐き気の緩和が期待できます。とくに内関(PC6)は、複数の臨床研究で術後悪心・嘔吐(PONV)や妊娠悪阻への有効性が報告されているツボです。
激しい嘔吐が続く、血が混じる、強い腹痛を伴う、高熱がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。ツボ押しはあくまで軽度の吐き気に対するセルフケアであり、急性疾患や重篤な状態には対応できません。
吐き気におすすめのツボ3選
① 内関(ないかん)PC6 ― 吐き気の特効穴
内関は手厥陰心包経に属し、八脈交会穴の一つとして陰維脈に通じます。「胃・心・胸」の症状に広く用いられ、とくに悪心・嘔吐に対しては東洋医学で最も代表的なツボです。複数のシステマティックレビューで術後の悪心嘔吐(PONV)への有効性が報告されており、WHO(世界保健機関)の鍼灸適応疾患リストにも関連症状が含まれています。


位置:手首の内側、手首のしわから肘に向かって指3本分(約5cm)のところ。2本の腱(長掌筋腱と橈側手根屈筋腱)の間にあります。
押し方:反対の手の親指で、2本の腱の間をやや強めに押し込みます。「ズーン」と腕の方に響く感覚があれば正しい位置です。5秒キープ → 離す、を5〜10回。吐き気を感じたらすぐに押し始めましょう。
ポイント:乗り物酔いの予防には、乗車30分前から押し始めると効果的です。市販の「酔い止めバンド」も内関への持続的な圧迫を利用した製品です。
② 足三里(あしさんり)ST36 ― 胃腸の万能ツボ
足三里は足陽明胃経の合穴(ごうけつ)で、胃腸疾患に最も広く用いられる経穴の一つです。胃の運動機能を調整し。消化吸収を助ける作用があるとされ、「胃の六つ灸」の一つにも数えられます。吐き気だけでなく、食欲不振や腹部膨満感にも伝統的に応用されています。


位置:膝のお皿(膝蓋骨)の下端から指4本分(約8cm)下、すねの骨(脛骨)の外側のくぼみ。膝を曲げて探すと見つけやすいです。
押し方:親指の腹でやや強めにゆっくり押し込み、5秒キープ → 離す、を左右各5回。押したときに脚の方にズーンと響く感覚があれば正しい位置です。
ポイント:え灸との相性がとても良いツボです。市販のせんねん灸を使ったセルフケアもおすすめですが、初めての方は鍼灸院で指導を受けてから行うと安心です。
③ 中脘(ちゅうかん)CV12 ― 胃の中心を整える
中脘は任脈上に位置し、「腑の会穴」として六腓(胃を含む消化管系統)の疾患に布く用いられます。胃の正中にあたるため、胃気を直接調整できるツボとして重視されてきました。吐き気、胃痛、腹部膨渀感など、胃の症状全般の第一選択穴です。

位置:おへそとみぞおち(胻骨の下端)を結んだ線の真ん中。おへそから指4本分上の正中線上です。
押し方:仰向けに寝て膝を立て、お腹の力を抜いた状態で行います。両手の人差し指と中指を重ねて中脘にそっと当て、息を吐きながらゆっくり押し込みます。3〜5秒キープ → 離す、を5回。
注意:食直後は避けてください(食後30分以上あけましょう)。満腹時や妊娠中の方は腹部への圧近を控えてください。
セルフケア実践ガイド|安全な押し方のコツ
基本の押し方:指の腹を使い、「気持ちいい」と感じる圧でゆっくり押します。1回3〜5秒、1か所5回が目安。呼吸を止めず、吐く息に合わせて押しましょう。
急な吐き気に:まず内関(PC6)を強めに押してください。両手首にあるので、いつでもどこでも押せます。乗り物の中でも周囲を気にせずできるツボです。
慢性的な胃の不調に:内関 → 足三里 → 中脘の順に、朝晩1日2回を習慣にすると胃腸の調子が整いやすくなります。
やってはいけないこと:吐き気がひどいときに無理に食事をしながらツボを押す。食直後にお腹を強く押す。痛みが出るほど強く押すなどは避けましょう。
効果を高める配穴の組み合わせ
上記3つのツボに加え、以下のツボを組み合わせると相乗効果が期待できます。
もっと効果を実感したいなら ― 鍼灸院という選択肢
セルフケアのツボ押しで軽減しない吐き気や、慢性的な胄腸の不調がある場合は、鍼灸院での専門的な施衃を検討してみてください。鍼灸師は体質(証)に合わせた経穴の選択と刺激量の調整ができるため、セルフケアでは届かない深い層へのアプローチが可能です。
とくに内関への鍼刺激は、指圧よりも効果的であることが複数の研究で示唆されています。
関連する経穴・ツボガイド
本記事で紹介したツボの詳しい解説は、以下の経穴ガイドをご覧ください。
手厥陰心包経(PC)ガイド
足陽明胃経(ST)ガイド
任脈(CV)ガイド
著者:ハリメド編集部|現役医師監修
本記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、特定の疾患の診断・治療を目的としたものではありません。症状が続く場合は医療機関を受診してください。
